2022.07.27

介護食

高齢者が食事すると吐くのはなぜ?原因や食事のポイントとは

高齢者が食事すると吐くのはなぜ?原因や食事のポイントとは

食べる力が衰えてきた高齢者は「食事をすると吐いてしまう」ということも珍しくありません。でも、あまりに頻繁だとご家族は心配になりますよね。

高齢者が食事を吐く原因は身体機能の低下による食べにくさだけでなく、病気や薬の副作用も考えられます。食事は体力に直結しますから、正しい対処法を学んで日頃から気を付けることが大切です。

この記事では、高齢者が吐く原因や対処法について解説します。吐き気がある時の食事のポイントもご紹介するので、少しでも食べられるように工夫してあげましょう。

1.高齢者が食事をすると吐く原因

高齢になると食べ物を詰まらせたり、むせたりすることも増えるのでその反動で吐くこともあるでしょう。しかし、食事を吐くときは病気や薬の副作用も疑わなくてはなりません。

便秘

高齢になると便秘になりやすいものですが、4日以上も出ないような頑固な便秘は嘔吐の原因になります。

腸内に便が詰まって消化できない食べ物が逆流する、胃腸に消化液がたまりやすくなり刺激で吐き気が起こる、大腸内にたまった便から発生した大量のガスが胃を圧迫するなど、便秘は様々な形で嘔吐を招くといわれています。

脳や消化管の病気

嘔吐は脳や消化管の病気のサインでもあります。吐き気と同時に以下のような症状があればすぐに受診しましょう。

<吐き気と頭痛がある>

・意識が朦朧としている…脳梗塞、脳出血、くも膜下出血など

・目の痛み…急性緑内障など

・めまい…メニエール病、突発性難聴など

<吐き気と腹痛がある>

・みぞおち…急性胃炎、胃がん、十二指腸潰瘍など

・上腹部…胆石、急性膵炎、急性肝炎など

・下腹部…腸炎、食中毒、虫垂炎など

・腰や背中…腎盂腎炎など

<吐き気と嚥下時の痛み、息の詰まり>

飲み込むときに胸のあたりに痛みや違和感がある、またはぜんそくのように息が詰まる場合は、逆流性食道炎の可能性が高い。

感染症

細菌やウイルス、寄生虫に感染して引き起こされる「感染性胃腸炎」は激しい嘔吐を伴います。夏に多い細菌性腸炎は食中毒、冬に多いウイルス性胃腸炎は嘔吐下痢症ともよばれる身近な病気です。

原因となる病原体には、腸炎ビブリオ・サルモネラ菌・O-157・カンピロバクター菌・黄色ブドウ球菌・セレウス菌(嘔吐型)・ボツリヌス菌・ノロウイルスなどがあります。

調理前の手洗い、除菌、加熱調理など基本的な予防策を欠かさないことが大切です。

薬の副作用

吐き気は薬の副作用としてよく記載されるものです。これまでは問題なかった薬でも年齢を重ねると生理機能の低下などによって副作用が現れやすくなります。また、複数の薬を服用していると副作用の頻度や程度が強くなる傾向があるので注意が必要です。

薬の変更時や服用後に嘔吐がみられる場合はかかりつけ医に相談しましょう。吐き気止めの処方や薬を変えるなどの提案がもらえるかも知れません。

2.吐き気がある高齢者の食事のポイント

食事をよく吐いてしまう高齢者に食べてもらうにはどうしたらいいのでしょうか?「まずは水分補給、吐き気が治まったら食べやすいものを少しずつ」が基本です。食事のポイントを詳しくみていきましょう。

複数回に分けて水分補給をする

吐き気があるときは無理に食事をさせず、水分摂取に努めましょう。一度に大量の水分を取ると吐いてしまう可能性があるので、少量をこまめに分けて飲むことが大切です。水分摂取には番茶や湯冷まし、薄めたスポーツドリンクなどが適しています。

消化が良い物を少しずつ取る

吐き気が治まったら消化が良い食事を用意して少しずつ食べさせましょう。消化器官に負担がかからないようにやわらかく調理し、油は少なめにします。一回の食事量は控えめにして間食も利用して全体の食事量を確保するのもポイントです。

<消化が良い食品の例>

・主食:お粥・うどん・そうめん・ごはん・パン

・主菜:卵・豆腐・脂肪分の少ない肉や魚

・副菜:繊維の柔らかい野菜類

・間食:乳製品、酸味の弱い果物

<避けたい食品>

・食物繊維の多い野菜や果物

・辛味やカフェインを含むもの

・ガスを発生させやすい豆やイモ類など

・胃の負担になる冷たいもの

さっぱりした口当たりがよいメニューを選ぶ

胃腸の調子が悪いときは、さっぱりとした味で口あたりや喉ごしが良い食べ物がおすすめです。

例えば、さらりと食べられるそうめんやうどん、果物やゼリーなど水分が多い方が食べやすいでしょう。ただし、こってりしたスープや刺激が強い薬味、吐き気につながる酸味などは胃腸に負担がかかるので控えましょう。

強いにおいを抑える

吐き気は食材のにおいで誘引されることがあります。ニンニク・ニラなど強いにおいの食材は避けるようにしましょう。味に変化を付けたいときはハーブやレモンなど爽やかな香りの食材がおすすめです。

においの良し悪しは、体調によっても変化があるものなので本人に確認すると安心です。部屋に花を飾っている場合はその香りも気にしてあげるといいかもしれません。

3.高齢者が食事を吐いたときの対処の流れ

いくら気を付けていても吐いてしまうことはあります。嘔吐は詰まりによる窒息や介助者の感染が心配です。落ち着いて対処できるように流れと注意点を把握しておきましょう。
<嘔吐対処の流れ>

  1. 吐くための洗面器を用意する
  2. 介助者は感染対策の手袋・マスクをつける
  3. 吐き終わったら口をすすがせる※無理に吐かせないこと
  4. 構内の嘔吐物を確認して、あれば取り除く
  5. 横向きに寝かせて休ませる
  6. 吐き気が治まったら少しずつ水分補給
  7. 嘔吐物や他の症状、直前の様子などを確認する
  8. なるべく早く受診する

よく吐いてしまう場合は普段から近くに洗面器・手袋・マスク・掃除道具などを用意しておきましょう。

また、介助する際は無理に吐かせない、誤嚥に気を付ける、自己判断せず医師に診せることが重要です。嘔吐前後の様子や他の症状を詳しく記録しておくと診断に役立つはずです。

4.高齢者の夏は水分不足の嘔吐に注意

夏の高齢者の吐き気や嘔吐は熱中症も疑いましょう。

暑さで発汗が増えて誰もが脱水になりやすい季節ですが、高齢者は温度やのどの渇きに対する感覚や体温調節機能が低下しているため、本人が気づかずに熱中症になるケースが多発しています。

熱中症予防はこまめな水分補給が必須ですが、身体を重く感じる高齢者はトイレへ行くのが億劫で、水分摂取を控えてしまう人もいます。水分不足は嘔吐の原因のひとつである便秘も招きます。

そばにいる家族が十分な水分摂取ができているか確認してあげましょう。飲み水からの水分補給量の目安は一日1.2リットル、発汗量が多い場合は塩分の補給も心がけましょう。

5.まとめ

高齢者が食事すると吐いてしまう原因は、便秘や病気、食中毒、薬の副作用など様々です。夏は熱中症の可能性もあります。よく起こることでも自己判断せずに必ず早めに受診しましょう。

吐き気があるときは無理に食べさせず水分補給をさせ、落ち着いてから消化のいい食事を少量で用意しましょう。複数回に分けることや食材のにおいや口当たりにも工夫をすると食べやすいはずです。

高齢者の嘔吐は喉の詰まりや感染症が危険ですから、正しい対処法を頭に入れておきましょう。前後の様子や他の症状などを記録しておくと、医師に伝えるとその後の診断で役立つはずです。

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