2021.11.25
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高齢者に低栄養が多いのはなぜ?原因と対策方法やレシピも紹介
厚生労働省の「令和元年国民健康・栄養調査報告」によると、65歳以上で約17%、85歳以上で約23%の高齢者が低栄養であることが判明したが、なぜ高齢者に低栄養が多いのだろうか。
また、低栄養を防ぐためにどんなことに気を付ける必要があるだろうか。
今回は、高齢者に低栄養が多い原因と対策方法に加え、低栄養を防ぐ栄養バランスのとれたレシピについて紹介する。
目次
1.なぜ?高齢者が低栄養になりやすい3つの原因
高齢者が低栄養に陥りやすいのはなぜなのか、3つの原因について紹介する。
①.身体的原因
身体的原因とは、老化による身体機能の衰えが低栄養につながるものだ。
たとえば体力が低下した高齢者のなかには、スーパーで買い物しても自宅まで重い荷物を運ぶことを困難に感じ、軽い即席麺やパン類ばかり購入してしまう人もいるだろう。また、長時間台所に立つのもつらく感じてしまうため、調理済みの惣菜や加工食品などで食事を済ませてしまうことが考えられる。
このような食生活を続けると栄養の偏りや栄養不足に陥りやすくなる。ほかにも、咀嚼力や消化機能の衰え、味覚の低下による食事への関心の薄れなども、食欲の減退や食事量の減少につながる。
②.精神・心理的原因
うつや認知機能障害などの精神・心理的原因により、適切な栄養摂取が出来なくなってしまう場合もある。
配偶者やペットとの死別、「歩くのが遅くなった」「音を聞き取りづらくなった」といった老化による身体機能の低下など、高齢者が受ける喪失体験は精神的ストレスとなって食欲を低下させてしまう。
また、認知機能が低下している場合、同じ食品ばかり買ってしまう、料理で味付けがおかしくなってしまう、作る料理が限定されてしまうといったことが、栄養の偏りや不足につながると考えられる。
③.社会的原因
買い物が困難な住環境や閉じこもりによる孤立、貧困などの社会的要因も低栄養に関わっている。
たとえば、家の近くにスーパーなどがない、社会的な孤立感から一人で家にこもりがちといった高齢者は買い物に行く回数が少なくなるため、腐りやすい生鮮食品よりも保存の効く加工食品やレトルト食品などをまとめて購入しやすいといわれている。
また、経済的に余裕がない場合も、生鮮食品の購入や食べる量が減ってしまうため、栄養の偏りが懸念される。
高齢者の低栄養は以上のうちの1つ、もしくは複数の原因がきっかけとなって起こると考えられている。次に低栄養が体に及ぼす影響について紹介していく。
2.低栄養の症状と影響
高齢者の低栄養では以下の症状がみられる。健康状態に大きく影響するため、要注意だ。
体重の減少
低栄養の状態が続いた場合、体の筋肉や脂肪が分解されて必要なエネルギーに変換されるため、体重の減少がみられる。筋肉や脂肪が減少すると、転倒による骨折や皮膚が炎症を起こすリスクも高まる。
運動機能の低下
筋肉が減少すると、立ったり歩いたりする運動機能が低下してしまう。その結果、転倒しやすくなる、寝たきりになってしまうといった可能性が高くなる。
骨折のリスク
低栄養ではカルシウムも不足しているので、ちょっとしたきっかけでも骨折しやすい。カルシウムが不足すると骨量(骨に含まれるカルシウムなどミネラルの量)が減少して骨粗しょう症になる可能性が高い。さらに筋力やバランス機能も低下しているため転倒しやすく、その際に骨折してしまうことがある。
皮膚の炎症
筋肉や脂肪が減ると、座っているときや寝ているときに骨が皮膚を圧迫してしまうため、皮膚が炎症を起こしやすくなってしまう。皮膚の炎症が悪化すると床ずれを起こしてしまう場合もある。
免疫機能の低下
免疫効果を高めるビタミンCや粘膜を保護するビタミンAなどが欠乏すると、免疫力が低下してしまう。免疫力が低下すると風邪にかかりやすく長引いてしまうことが多い。また、気管支炎や肺炎などの合併症も起こりやすいため注意したい。
低血糖のリスク
炭水化物の摂取量が減ると血中のグルコースが不足し、低血糖の状態になる。低血糖の代表的な症状は発汗や動悸、手足の震え、悪寒などだが、重症化するとけいれんや昏睡などの意識障害を起こすこともある。
3.高齢者の低栄養を防ぐ3つの食事ポイント
高齢者の低栄養予防にはどのような食事が良いのだろうか。3つのポイントを紹介しよう。
1日3食プラス間食
高齢者は一回の食事で食べる量が少ないため、1日3食とらないとエネルギーやタンパク質が不足してしまう。食事は必ず3食そろえ、しっかり食べることが大切だ。
1食分も食べ切れない場合は、間食で補うようにしよう。タンパク質を多く含むヨーグルトや牛乳などの乳製品、ビタミン豊富な果物、栄養補助食品を取り入れるのも良い。
規則正しい食事は、生活リズムを整え、食欲や心の健康を整えることにもなる。健康管理の基本として覚えておこう。
栄養バランスの整った食事内容
簡単な食事で済ませようとすると炭水化物に偏り、肉や野菜などを含んだおかずがおろそかになってしまうため、3回の食事のうち2回以上は、主食・主菜・副菜を心がけた栄養バランスの良い内容でとることが推奨されている。
・主食:ご飯、パン、麺類など
・主菜:魚、肉、卵、大豆製品など
・副菜:野菜、きのこ、いも、海藻など
特に、筋肉の減少を防ぐ「タンパク質」、骨粗しょう症予防になる「カルシウム」、カルシウムなどミネラルの吸収を促進する「ビタミンD」、血中コレステロール濃度を低下させる「食物繊維」は高齢者の食事で不足しがちなことが多いので意識して摂ってほしい。
厚生労働省と農林水産省による「食事バランスガイド」を参考にするのも良いだろう。
食事を楽しめる工夫
味にバリエーションを持たせると、楽しみながらいろいろな食材を食べられるはずだ。味が薄い減塩食は酢や香辛料などでメリハリをつける工夫をすると、食欲を落とすことなく美味しく食べられるだろう。見た目の美しさも食欲と直結するのでこだわりたい。
また、家族で食事する機会を増やすと、食事の楽しみや重要性を思い出し、食欲が増すかもしれない。家族での食事が難しい場合はデイサービスなどを利用して、一人で食べることのないように工夫しよう。
ほかにも、気分転換に外食もおすすめだ。定食のようにいろんな食材が食べられるものなら、高齢者に不足しがちな栄養素も取り入れられる。特にタンパク質の摂れる肉や魚、ビタミン・ミネラルの豊富な野菜や海藻類、食物繊維の多い豆類や根菜類などが含まれるメニューを選ぶようにしよう。
4.管理栄養士直伝!高齢者の低栄養を防ぐレシピ
高齢者の低栄養を防ぐために、管理栄養士が考案した栄養バランスに優れたレシピを紹介する。3食と間食のレシピを2人前の分量で記載しているので、日々の食生活で役立ててほしい。
厚揚げのしょうが煮
【材料】(2人前)
厚揚げ1枚(250g)
ほうれん草1袋(400g)
しめじ(1P)
しょうが10g
<A>
だしカップ1
みりん大さじ2
酒大さじ2
しょうゆ大さじ2
【下処理】
厚揚げはボウルに入れ、熱湯をかける。取り出して粗熱を取り、端から6等分に切る。ほうれん草は沸騰した鍋に塩を入れて下茹でし、2〜3cm幅に切る。しめじは石突をとってほぐし、しょうがは薄切りまたは千切りにする。
【作り方】
1.フライパンに<A>を入れて中火にかけ、厚揚げとしょうがを加える。煮立ったら約1分間煮て、その他の材料も加えてさらに煮る。
【ポイント】
しょうがなどの香味野菜を使用することで食欲を増進させる。食物繊維やビタミンDが豊富なきのこ類はどんな料理にも使いやすいので積極的に取り入れよう。
焼きさばにゅうめん
【材料】(2人前)
さば2切
なす1本
乾燥ワカメひとつまみ
みょうが2個
そうめん2束
白だし1/4カップ
しょうゆ小さじ2
【下処理】
鍋にお湯を沸かし、乾燥ワカメは茹で戻して、食べやすい大きさに切る。なすは乱切りし、水につけてアク抜きする。みょうがは斜め切りまたは千切りする。
【作り方】
1.フライパンで油を熱し、さばを皮目から強火で焼いていく。2~3分焼いたらひっくり返して中火で反対の面も焼いていく。
2.さばを焼いている間に、なすにサラダ油(分量外)をまぶして全体になじませ、500Wの電子レンジで6分ほど加熱する。
3.鍋にお湯を沸かし(1L)、そうめんを茹でる。
4.3に白だしとしょうゆをいれて味を整えたら器に盛り、さば・なす・みょうが・ワカメを盛り付ける。
【ポイント】
そうめんを洗わずにそのまま煮ることで、とろみがでて高齢者も食べやすくなる。
肉団子のミルク煮
【材料】2人前
かぶ(葉付)2個
人参中1/4本
生しいたけ2枚
水1カップ
コンソメ大さじ1/2
豆乳1/2カップ
牛乳1/2カップ
塩少々
こしょう少々
<肉団子>
鶏ひき肉100g
玉ねぎ1/4個
酒大さじ1/2
片栗粉小さじ1
塩 少々
こしょう少々
<水溶き片栗粉>
片栗粉小さじ1
水大さじ1
【下処理】
かぶは茎を1cm残して六つ割にし、しいたけは軸を1cm残して四つ切り、人参は乱切りにする。
玉ねぎはみじん切りにする。
【作り方】
1.ボウルに肉団子の材料を入れてよく練り混ぜる。混ざったら10等分にして丸める。
2.鍋に水・塩を入れて火にかけ、煮立ったら1を入れる。再び煮立ったらアクを除き、ふたをして弱火にし、約8分煮る。
3.野菜を加えて強火にし、煮立ったらふたをして弱火にしてコンソメを入れ、野菜が柔らかくなるまで煮る。豆乳、牛乳、バター・塩・こしょうを加えてひと煮立ちさせる。
【ポイント】
豆乳を加えてからぐつぐつ煮たり激しく混ぜたりすると、豆乳が分離してダマになりやすい。最後は煮立ちすぎないように、やさしく混ぜながら仕上げる。お肉が食べにくい高齢者でも食べやすいように、肉団子にはひき肉を使用する。カルシウムやタンパク質も手軽に補えるはずだ。
かぼちゃプリンあずき添え
【材料】2人前
かぼちゃ正味70g
砂糖15g
卵1/2個
牛乳70cc
バニラエッセンス適量
あずき缶30g(添える用)
【作り方】
1.皮を取り除いたかぼちゃを小さめに切ったら、ラップをして電子レンジで5分ほど温めて柔らかくする。冷凍かぼちゃでも代用可能だ。
- オーブン170℃、30分に予熱開始。ポットにお湯(天板用)をわかす。
- ミキサーにかぼちゃと、あずき以外の材料をすべて入れてよく混ぜる。
- 3をざるでこしながら大きめのボウルに移し、型に流し込む。
5.天板に型をのせ、お湯を天板の高さの半分程度まで注いだら、170℃のオーブンで30分焼く。冷めたら冷蔵庫で冷やしてできあがり。
6.お好みであずきを添えて下さい。
【ポイント】
ビタミン豊富なかぼちゃは、脂質と一緒に摂取することで効率よくビタミンを吸収できる。
5.高齢者の低栄養を手軽に防ぐなら宅配弁当
毎日栄養バランスを考えながら3食用意するのは大変だ。そこで、自宅に届いてすぐに食べられる宅配弁当をおすすめしたい。
管理栄養士が監修したタイヘイの冷凍宅配弁当のなかから、高齢者の低栄養防止におすすめのシリーズを紹介する。
彩ごころ®
タイヘイの彩ごころ®は、管理栄養士が監修し、和・洋・中全21種類の多彩なラインナップを用意しているので、飽きずにいろんな味を楽しめるだろう。
エネルギー150kcal前後、食塩相当量1.3g以下と健康的な仕上がりで、味付けや盛り付け、品目のバランスも良く、おいしく食べられるはずだ。また、骨抜き魚を使用するなど、高齢者が安心して食べられるように工夫している。
ヘルシー御膳®
糖尿病や肥満など、エネルギー調整食が必要な方にはヘルシー御膳🄬をおすすめしたい。カロリーや塩分を抑えつつ、栄養バランスのよい食事がとれる。
ヘルシー御膳🄬は医師・管理栄養士が監修し、消費者庁の定めた「食事療法用宅配食品等栄養指針」に基づいて作られており、糖尿病など1日1200~1800kcalのカロリーコントロール食が必要な方にも対応している。また、塩分は2.2g以下に抑え、野菜もたっぷり入った栄養バランスの整ったメニューとなっている。
注文の際は、主食(ご飯や麺類)のあり・なしが選べるようになっており、高齢者の食事量に合わせて選べるようになっている。
5.まとめ
高齢者が低栄養になる原因は3つある。
体力の低下から買い物や調理を避けて調理済みの惣菜や加工食品を食べるようになる身体的原因。精神的ストレスや認知機能の低下により食欲減退や栄養が偏ってしまう精神・心理的原因。そして外出の機会減少や経済的圧迫から、生鮮食品よりも保存のきくレトルト食品などを好む社会的原因だ。
低栄養状態が続くと、運動機能の低下や骨折、免疫力の低下などのリスクが高まる。そこでタンパク質やビタミン、カルシウムなど、栄養バランスの整った食事を1日3食きちんと食べることが重要になる。また、家族や友人と食卓を囲んで楽しく食べることも、食欲増進につながるはずだ。
栄養バランスの整った食事の用意が難しい場合は、管理栄養士が監修した宅配弁当を取り入れると負担軽減が期待できる。
管理栄養士資格、栄養士資格、フードスペシャリスト資格
食事療法が必要な方や老若男女問わず、心身ともに健康になれるお食事のお手伝いがしたいという想いから、タイヘイ株式会社に入社。現在は、管理栄養士として在宅向け商品の開発・販売とお電話でよせられるお客様からの食事に関するご相談の業務を行なっています。より多くの方が健康な日々を過ごせるように、食と健康に関する豊富な情報を発信していきます。
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