2022.09.29
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高齢者の食事量は活動量で変わる!寝たきり/無職/職業有の3ケースで解説
目次
高齢者の食事量は活動量で変わる!寝たきり/無職/職業有の3ケースで解説
高齢になると栄養不足も肥満も病気に直結する大きな問題です。食事量に気を遣っている人は多いでしょう。
そんな中、「寝たきりの人も働いている人もいるのに、年齢だけが記された食事量の目安を信じていいの?」と悩む人もいるのではないでしょうか?
その通り、高齢者の食事量はその人の生活スタイルで大きく変わります。
今回は「寝たきり」「無職」「職業有」の3つの活動状況に分けて、適切な食事量を解説します。生活スタイルごとの食事の注意点もご紹介するので、ぜひ参考にしてください。
1.高齢者に必要な食事量は生活スタイルで変わる
よく目安として公開されている世代別の1日に必要な食事量(エネルギー量)は、あくまでも普通の活動量で標準体重の場合のもの。正確な数字が知りたい場合は、その人の活動量や体重に合わせて計算し直す必要があります。
特に高齢者は同じ年齢でも、寝たきりの人、自宅でゆっくり過ごす人、バリバリ仕事をこなす人で活動量に大きな差があるので、正しい食事量を知りたい場合は生活スタイルに合った目安を知ることが大切です。
一般的な生活スタイルをふまえた1日に必要な食事量(エネルギー量)は、以下の計算式で求められます。
1日に必要な食事量(エネルギー量)=
標準体重(kg)×体重1kgの必要なエネルギー消費量(kcal)
※標準体重=身長(m)×身長(m)×22
※体重1kgの必要なエネルギー消費量
活動の程度 | 体重1kg当たりの必要エネルギー量 |
安静中・寝たきり | 20kcal |
1日のほとんどを室内で過ごす | 25kcal |
家事や仕事でそれなりに体を動かす | 30kcal |
農家や漁師、大工などの肉体労働をする | 35~40kcal |
上記の式はあくまで目安です。本格的な減量目的や持病がある場合は、身長、体重、活動量、合併症などさまざまな項目を考慮したエネルギー量計算が必要です。自己判断せず主治医に相談しましょう。
また、活動状態によって食事の注意点も変わります。次章から生活スタイルごとの食事量の計算例と一緒に注意点も詳しくご紹介するのでご覧ください。
2.高齢者の食事量の目安と注意点【寝たきりの場合】
寝たきり状態の高齢者について、食事量の目安と注意点を解説します。
寝たきりの高齢者の食事量の目安
寝たきりの高齢者の場合、体重1kgあたりのエネルギー消費量は20kcalです。身長170㎝体重60㎏の人の1日に必要なエネルギー量は1,272kcalになります。
1日に必要な食事量(エネルギー量)=
標準体重(kg)×体重1 kgの必要なエネルギー消費量(kcal)
(1.7×1.7×22)kg×20kcal=1,272kcal
寝たきり高齢者の食事の注意点
寝たきりの高齢者の食事には、さまざまな注意が必要です。
必ず医師に相談する
寝たきり状態だとほとんど活動がないので、見た目や体重が変わらなくても筋肉量が落ちて脂肪に置き換わるサルコペニア肥満になっている場合や、食事量が落ちてやせすぎの状態になっているケースがあります。
体重と身長をもとにする計算式通りのエネルギー量では過不足が生じやすいので、必ず主治医に相談してエネルギー量を調整してもらいましょう。
水分量にも注意する
寝たきりの人はのどの渇きを訴えにくいだけでなく、排尿を減らすために水分を控えがちです。脱水症状になりやすいので、飲み物を摂るよう定期的に促したり、食事の水分量を増やしたりしてください。なお、食事量が減ると水分量も減ってしまうので、やわらかく食べやすい調理法を意識しましょう。
食事の姿勢を整える
寝たきりだと飲み込む力が衰えていることも多く、食事が気管に入って誤嚥性肺炎になりやすくなります。誤嚥を防ぐには、正しい姿勢の状態で食事を摂ることが大切です。車椅子なら足を床につけ、ベッドで食べる場合はリクライニングを45~80°の角度に起こしましょう。もし、正しい姿勢になっているか分からない場合は、介護士などにチェックしてもらいましょう。
3.高齢者の食事量の目安と注意点【無職の場合】
仕事を引退して自宅で大半を過ごす高齢者のエネルギー量と注意点を解説します。
ほとんど外出をしない高齢者の食事量の目安
ほとんど外出せず運動は軽い家事程度という高齢者のエネルギー消費量は体重1kgあたり25kcalです。身長170cm体重60kgの人の1日に必要なエネルギー量は1237kcalになります。
標準体重(kg)×体重1 kgの必要なエネルギー消費量(kcal)
=1日に必要な食事量(エネルギー量)
(1.7×1.7×22)kg×25kcal=1,589kcal
外出をしない高齢者の食事の注意点
あまり外出をしない高齢者の食事の注意点は、栄養の偏りと肥満です。
栄養バランスの偏りによる低栄養
買い物が困難だったり、足腰が痛くて台所に立てなかったりすると、米や麵類だけといった簡単な食事になりやすく低栄養のリスクが高まります。低栄養は筋肉量や免疫力の低下を招くので、エネルギー量だけでなくバランスのいい食事を心がけましょう。
特に、たんぱく質とカルシウムを十分に摂取すると高齢者の転倒・骨折リスクが減るという研究結果があるので意識して摂ることがおすすめです。
肥満
家から出ない生活を続けていると運動量が落ち、肥満リスクが高まります。肥満は糖尿病や高血圧、脂質異常症などの生活習慣の原因となるので高齢者は特に注意が必要です。まずは標準体重より重いかどうかを調べ、重かった場合は肥満度(BMI)を計算してみましょう。
<肥満度の計算式>
肥満度(BMI)=自分の体重(kg)÷(身長m)²
<肥満度の見方>
18.5未満→やせ型
18.5~25未満→標準
25~30未満→肥満
30以上→重度の肥満
高齢者の減量は持病や生活習慣によって必要な栄養素やエネルギー量が異なります。ダイエットは必ず主治医に相談してから行いましょう。
4.高齢者の食事量の目安と注意点【働いている場合】
忙しく働いている高齢者のエネルギー量と注意点を解説します。家事を多くこなす人や農作業などの肉体労働をする人もこちらを参考にしてください。
働いている高齢者の食事量の目安
会社などで就労している高齢者では体重1kgあたり30kcalのエネルギー消費量となります。農家や漁師、大工など肉体労働が多い場合は35~40kcalを目安にしましょう。
身長170cm体重60kgの人では1日に必要なエネルギー量は1,907kcalになります。
標準体重(kg)×体重1 kgの必要なエネルギー消費量(kcal)
=1日に必要な食事量(エネルギー量)
(1.7×1.7×22)kg×30kcal=1,907kcal
働いている高齢者の食事の注意点
働いている高齢者の食事の注意点は、塩分・糖分の過剰摂取と栄養の偏りです。
塩分や糖分の摂りすぎ
働いて疲れていると、しょっぱいものや甘いものを食べたくなります。しかし、加齢により味覚が衰えているので、より濃い味の食べ物を選んでしまい、塩分や糖分を過剰摂取しやすくなります。糖尿病や高血圧の原因となるので注意しましょう。
栄養の偏り
忙しく働いている人は手軽な食事で済ませたり、仕事の付き合いで外食が増えたりしがちです。加齢で代謝が落ちているので若いころと同じような食生活では体がもちません。たんぱく質やカルシウムなどが足りないと転倒リスクが高まるので、仕事中のケガにつながるかもしれません。バランスのいい食事を心がけましょう。
5.すべての高齢者に共通する食事のポイント
生活スタイルに関わらず、どの高齢者にも共通する食事のポイントがあります。
- 味覚、咀嚼力、飲み込む力が衰えるので食べやすく調理する
- 栄養バランスが良いメニューを用意する
- 筋肉量維持のためにカルシウム、たんぱく質を意識して摂る
-
誤嚥しにくい姿勢で食事をする
- キレイな盛り付けや家族の同席で食事への意欲を出させる
健康に見える高齢者でも、味覚や噛む・飲み込む力が衰えていることが多いので、つねに食べやすい料理を心がけましょう。正しい姿勢で誤嚥防止に努めることも大切です。栄養バランスは筋肉と骨を維持するたんぱく質とカルシウムを中心にバランスよく摂りましょう。
食事への意欲が落ちている場合は、キレイな盛り付けや家族・友人と一緒に食べる機会をつくるのも効果的です。
6.まとめ
高齢者は同じ年齢でも、働いている人から寝たきりの人まで活動量の個人差が大きく、一般的な食事量(エネルギー量)の計算式では過不足が出る場合があります。生活スタイルに応じたエネルギー量を計算して、それぞれの注意点を踏まえた食事内容にしましょう。
また、食事量の配慮と一緒に、栄養バランスのいい食事、食べやすさ、正しい姿勢、食欲がわく工夫などにも配慮すると高齢者の健康維持に効果的です。
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